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16 July 2012

ソフトウェア品質モデルの歴史(3)-品質モデルの開発と標準化

前回の記事で「Wulfが最初にソフトウェアの品質特性を体系化した」というのは言い過ぎであると書きました。では、いつ誰により体系化されたのでしょうか。
  日本の書籍では、Wulfの後は「1976年にBoehmが国防省の要請に応じて研究し品質モデルを発表した」と書かれているものが多いのですが、実はこれも誤っているところがあります。
  最初に品質特性を体系化し品質モデルを提案したのはBoehmというのは間違いないと思います。Boehmの品質モデルに関する文献は以下の3件あります。

[1] "Characteristics of Software Quality," TRW Software Series, TRW-SS-73-09, December 1973
[2] B. Boehm, J. Brown and M. Lipow, "Quantitative evaluation of software quality," 2nd ICSE, 1976
[3] "Characteristics of Software Quality," TRW Series of Software Technology 1, North-Holland, 1978Boehmcsq1978_2

[1]はTRW社のBoehmらがNBS(National Bureau of Standards,米国標準局)の委託を受けて研究したレポートです。[2]は1976年に開催された第2回ICSEで発表された論文で、これによりBoehmの品質モデルが広く知られるようになりました。[3]はそれまでの発表レポートや論文も含めて研究成果を書籍化したもので、[1]のレポートや[2]の論文で書かれた内容も含まれています。
  入手できた文献[2][3]を読むと、1973年のTRWレポートで既に品質特性の体系化、品質モデルの構築、メトリクスの開発に関して報告されていることが分かります。
  以上から、(1976年ではなく)1973年にBoehmらが(国防省ではなく)米国標準局NBSの委託を受けて品質モデルを開発したのが最初というのが正確な経緯だと思います。
Boehm_3 

つぎに品質モデルを体系化したのは米国空軍の委託を受け1977年に以下のレポートを発行したGE社のMcCall、Richards、Waltersです。

J. McCall, P. Richards and G. Walters, "Factors in Software Quality," RADC-TR-77-369, Rome Air Development Center, 1977
   Vol-1 Concepts and Definitions of Software Quality
   Vol-2 Metric Data Collection and Validation
   Vol-3 Preliminary Handbook on Software Quality for an Acquisition Manager Mccall_2

McCallらは、1977年以前に発表された品質特性に言及している先行研究論文31件から、ソフトウェア品質要因(Software Quality Factor)として55個を抽出し、それらを集約整理・体系化してソフトウェア品質モデルを構築しました。利用者視点(ファクタ)、開発者視点(クライテリア)、および測定可能なレベル(メトリクス)の三階層構造で結び付けた最初のソフトウェア品質モデルとして高く評価されており、後の品質モデルの標準化作業でも参考にされました。

Mccall_3

品質モデルの国際標準化作業は1985年から開始され1991年に最初の国際規格ISO/IEC 9126: Information technology - Software product evaluation - Quality characteristics and guidelines for their useが発行されました(翻訳版はJIS X0129が1994年に制定)。
  現在は、後継のISO/IEC 25000 Software product Quality Requirement and Evaluation(SQuaRE)シリーズの制定作業が続けられています。

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